原子力ポスターコンクール

基本情報

・ 制作:2015年~

・ 種別:インスタレーション

・ サイズ:B3(ポスター1枚)

・ 素材:ポスター・キャプション・薔薇シール


解説

文部科学省と経済産業省は、原子力と放射線への理解と認識を深めることを目的に2010年まで「原子力ポスターコンクール」を毎年開催していました。コンクールでは、原子力発電のクリーンで安全なイメージと安定したエネルギー供給による未来への希望を表現した多くの子供たちの作品が展示されました。また、政府が「原子力の日」と定めた10月26日には、これらのポスターが広報に活用され、偏った原子力発電のイメージを日本に広めました。

しかし、子供たちが原子力発電の危険性や安全対策について真に理解した上でポスターを描いていたとは思えません。もし、子供たちによるポスターが原子力発電に関する偏った教育や知識の上に制作されていたのであれば、日本の政府は、無知な子供を原発推進のプロパガンダに利用していたと言えます。

本作品は、2011年以降開催を見合わせている架空の「原子力ポスターコンクール」をパロディーとして表現しています。これらのポスターに見られる原子力発電をめぐる無責任で曖昧な表現からは、時代の潮流に乗り世論に恭順的な共感や反感を唱えるだけの人間の浅はかさが伝わってきます。

「福島第一原子力発電所事故」という未曾有の人災を招いて以来、それまで自然環境や原子力発電に対して何の問いかけもしてこなかった人々が上げた声は、やはり一過性でした。さらに、このようなにわか仕込みの世論は、風評被害やいじめなどの差別を生み出しました。パラダイムシフトが起きた時、社会の構成員である私たちは、安易にマジョリティー側の思想に加勢するのではなく、真実を見つめ、ゼロから新たな規範を問い直していく力が試されているのです。

SEINOは毎年3月に新たなポスターを描くことにより、この問題に向き合う時間を作っています。本作品は、展示ごとに枚数が増加し、規模を拡大しています。