社会規範感染症

基本情報

・ 制作:2011年(再編集:2015年)

・ 種別:映像

・ サイズ:2分45秒

・ 素材:スクリーン・プロジェクター・PC


解説

主人公の青年は、同級生の間でひょっとこのお面が流行していることに動揺を隠せません。ひょっとこのお面をつけることは、カッコイイとは程遠い不可解な行為に思えました。しかし青年は、お面が蔓延する周囲の状況に孤独感や疎外感を覚え、最後には自らお面を被り周囲に同化してしまいます。

私たちの身の回りに起こる様々な営みの中で、正しいとは何か、間違っているとは何であるのか。感染症のように時代の規範や価値観にいとも簡単に洗脳される人間は、自らの考えで行動出来ているのでしょうか。

本作品は、「原子力発電所反対デモ」が盛んになり始めた時期に制作されました。当時SEINOは、10歳以上年の離れた若者たちと一緒に大学生活を送っていました。彼らの間では公共広告のテレビコマーシャルに起用された楽曲のフレーズ「ポポポポーン」が流行していました。デモ参加者の急激な増加と、一つのフレーズを唱える若者の増殖が重なり、時勢に適応し一つの価値観に引き寄せられる集団の動きに極度の薄気味悪さと危機感を覚えたとSEINOは言います。

「ポポポポーン」と唱え続ける若者たちの顔が、口を突き出したひょっとこに見えたことに着想を得た本作品には、実際の同級生たちが出演しています。さらにSEINOは当時、本作品に『NIPPON』というタイトルをつけ、授業の演習課題として提出しています。このことから、映像作品としてだけではなく、撮影から提出までの行為そのものが強いステイトメントを内包した一つのパフォーマンスであったことが窺い知れます。


チャプター

1:異質/大学生の青年は、数人の同級生がひょっとこのお面を被っていることに違和感を覚える。

2:流行/同級生の間でひょっとこのお面を被ることが流行し、青年は動揺を隠せない。

3:孤立/大学の中でひょっとこのお面を被っていないのは、とうとう青年一人になり、孤独感や疎外感を覚える。

4:同化/青年は、多数派に従い自らひょっとこのお面を被る。


協力

【出演】東京工芸大学 芸術学部 インタラクティブメディア学科の皆さん/【技術】SEINO