NOISY & SMELLY

基本情報

・ 制作:2008年(修復他:2013年)

・ 種別:インスタレーション

・ サイズ:H424 W328 D60(標本箱1箱)

・ 素材:標本箱・虫ピン・蛍光灯・iPod・ヘッドホン・メディカルシリコーン・人毛・蠅のフィギュア・診断書


解説

婦人科の待合室では、「幸福な女性」と「不幸な女性」が共存し、二極化した緊張感を生み出しているとSEINOは言います。「幸福な女性」とは、愛する人との間にできた子供を腹部に抱えた女性であり、「不幸な女性」とは、それ以外の理由により来院した女性を指します。一概に、後者を不幸であるとは言い切れませんが、そのほとんどは、婦人科系の治療や検査などで来院していると考えられ、何らかの不安を抱えた女性であると言えるでしょう。そして、紛れもなくSEINOも「不幸な女性」の一人として月に一度、婦人科の待合室に存在していました。

SEINOが通っていた婦人科では、定期検診に訪れた「幸福な女性」のお腹に宿る赤ん坊の心音が待合室にまで響き渡っていました。「不幸な女性」たちは、幸福のシンボルであるその音を強制的に聴かされていたそうです。「幸福な女性」は、その幸福をさらけ出すことに抵抗がなく、「不幸な女性」は、その不幸を隠そうとします。婦人科の待合室には薄桃色の平穏な時間が流れているように見えますが、水面下では「不幸な女性」のどす黒い経血色の行き場のない感情が渦巻いているのです。

本作品は、このような二極化する女性像を表現しています。左側の標本箱には、「幸福な女性」を象徴する女性の陰部が展示され、鑑賞者は膣からのびるヘッドホンから待合室にまで響き渡る赤ん坊の心音を聞くことができます。右側の標本箱には、不幸な女性を象徴した女性の陰部が展示され、その周りには無数の大きな蠅がたかっています。蠅は、標本箱の外側、天井、壁にも張り付き、右側の陰部を見据えてとまっています。また、隣に掲示したSEINOの診断書(実物)は、鑑賞者の作品への理解を助けています。