障害童子

基本情報

・ 制作:2003年

・ 種別:彫刻

・ サイズ:H1100 W400 D500 (左)・H1450 W400 D500 (右)

・ 素材:乾漆


解説

ダウン症候群の子供は、800人から1000人に一人の割合で産まれます。高齢出産の増加に伴い、近年、ダウン症候群の子供を妊娠する割合が増加傾向にあります。横浜市立大学国際先天性異常モニタリングセンターによれば、ダウン症候群の子供の出生報告数は、1995年では1万人あたり6.3人であったのに対し、2011年では13.6人と倍増しています。また、ダウン症候群を理由とした中絶数は、1995年~1999年を基準とすると、2005年~2009年ではその数が1.9倍に増加しました。妊娠を継続した場合に生まれていたとされる2011年のダウン症候群の子供の出生数は約2300人ですが、実際の出生数は1500人であり、その差約800人の一部が中絶されたと考えられます。2013年には、妊婦の血液から胎児の染色体を調べる新型出生前診断が導入され、胎児の染色体に異常が確定された56人のうち9割以上が中絶を選びました。(岡崎, 2014)

悲壮な覚悟で中絶を決断した母親がいることも想像に難くありません。しかし、これは人間の優生思想が引き起こした障害児の大量虐殺と、生存している障害者の存在否定に他ならないのです。2016年に起きた「相模原障害者施設殺傷事件」では、19名の知的障害者が刺殺され社会的注目が集まりました。しかし、私たちは、これよりはるかに多くの障害者が水面下で殺されているという事実を知る必要があるとSEINOは主張します。出生前診断は、全ての赤ちゃんとその家族のために準備を行うために有効な手続きであるはずです。しかし、倫理を伴わない医学技術の発展は、現代における「障害者殺し」を肯定するための道具と化す恐れがあることを証明してしまいました。

本作品では、ダウン症候群の子供達が、健常者の鑑賞者を見て驚き指を指すという差別行為を具現化することにより、「障害者殺し」というあからさまな障害者差別について再考する機会を提供します。

文献:岡崎明子, 2014, 「ダウン症児の出生、過去15年で倍増 全国調査から推計」, 朝日新聞デジタル, http://www.asahi.com/articles/ASG4L4R2MG4LULBJ00B.html, (参照2014-4-19)


協力

牧野りさ(モデル)/最上悠平(モデル)/公益財団法人日本ダウン症協会/有限会社目玉屋中道義眼製作所