ABOUT ME
研究、芸術、教育という3つ方法により全ての人がその人らしく生きることができる社会の実現を目指しています。
【研究】
障害者による芸術活動について以下の調査研究を進めています。
1. 当事者の声:
近年、障害者による芸術活動は「障害者アート」、「アール・ブリュット」、「アウトサイダー・アート」等と呼ばれています。これでは、「特別な人による特別な活動」であると誤解されてしまいます。そもそも、活動者の障害という属性による分類は本当に必要なのでしょうか。当事者を抜きに周囲にいる有識者や支援者が議論を重ねただけでは不十分です。芸術活動を行う障害者の方々を対象に、「自分の芸術活動や作品をどう呼ばれたいか」についての意識調査を行っています。
2. 社会の態度:
我が国では、2013年より障害者による芸術活動への国の手厚い支援体制が整えられ、関係者の間ではさながら「障害者アートのバブル期到来」のような盛り上がりを見せています。しかし、このような近年の国の取り組みは、社会の関心にも影響を及ぼしているのでしょうか。近年のブームが関係者間に限定されていた場合、関心の低い一般社会における芸術活動を通した障害者の社会参加の可能性ついては懸念が残ります。障害者による芸術活動への社会的関心や偏見について、新聞調査や世論調査を行っています。
3. 芸術界の態度
昭和30年代、精神科医の式場隆三郎により「日本のゴッホ」と評され一躍有名になった知的障害児施設「八幡学園」出身の山下清さんという方がいました。この山下さんのブーム対する芸術界の反応は忌避感そのものでした。「障害があるのにも関わらず」という枕詞抜きに山下さんの作品が評価されたなら、あれほどまでの賞賛は得られたでしょうか。近年の国の芸術支援施策も、障害という属性のある活動者に向けられ、機会の不平等が起こっています。もしかすると、既存の芸術との分断を加速させる取り組みをしてしまっているのかもしれません。芸術界を対象に障害者による芸術活動に対する意識調査を行っています。
4. 支援者の困りとニーズ
「令和5年度障害者芸術文化活動普及支援事業報告書」には、全国の支援センターが2023年度に対応した相談支援では、障害福祉関係者からの相談件数が最も多く、相談内容は「発表」「創造」「権利保護」の順に多いと明示されています。障害者による芸術活動の支援の現場では、福祉と芸術を横断したより専門的な支援が求められていることが推察できます。また、先行研究により、芸術活動を実施していない重症心身障害児施設では、指導者がいないことが一番の原因であることが分かっています。地域の障害児関連施設を対象として、芸術活動の実施状況の把握と支援を行ううえでの困りやニーズを調査しています。